6回目は春から初夏にかけて旬を迎える平貝
ワインペアリング 平貝 × ソアーヴェ・クラシコ
平貝は、その「清澄な甘味」と「歯切れの良さ」が魅力のネタ。これに寄り添うのは、ヴェネト州のソアーヴェ・クラシコ(ガルガーネガ主体)。石灰や火山性土壌に育まれた白ワインが、貝のミネラル感と共鳴する。
① 生仕立て × ソアーヴェ・クラシコ(ガルガーネガ主体)
◯ ペアリングのロジック
- 平貝の上品な甘みと、ソアーヴェが持つ白い花や洋梨のアロマが調和。
- 柔らかい酸とほのかなアーモンドのニュアンスが、貝の余韻に陰影を与える。
- 火山性土壌由来のミネラルが、海の清涼感と重なり合い、洗練された余白を描き出す。
② 炙り仕立て × ソアーヴェ・クラシコ(樽熟成タイプ)
◯ ペアリングのロジック
- 炙りの香ばしさに、樽由来のトースト香やナッツのニュアンスが寄り添う。
- 熟した果実味と貝の甘みが響き合い、握り全体を立体的に仕立てる。
- 「海と大地」の共鳴として、イタリアの白ワインが江戸前の鮨に新たな表情を与える。
── 清澄な生の甘みか、炙りの香ばしさか。
平貝の握りは、その存在感をソアーヴェが映し出し、静謐かつエレガントな余韻を生む。
平貝は「静謐な旨味」を纏った鮨の世界の異彩。派手さはなくとも、職人の包丁仕事によってその甘味と食感は際立ち、江戸前の繊細さを体現する。
その相手となるソアーヴェ・クラシコは、北イタリアの冷涼な風土と火山性土壌が生んだ、透明感ある白。柑橘と白い花の香り、石のようなミネラルが、平貝の清らかさに寄り添い、余韻を長く引き伸ばす。
生の平貝には花のような華やぎを、炙りにはナッツのような陰影を。ソアーヴェは、その二面性に応じて表情を変え、鮨の味わいを豊かに引き立てる。
華やかではなく、控えめで、しかし確かな存在感を放つ──。そこに“鮨とワインの間”の静かな調和が息づいている。
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