魚介の生臭さとワインの意外な関係──メルシャンが解明した科学的真実

魚介の生臭さとワイン

「白ワインには魚介」―そう言われるほど定番のペアリングなのに、時折「魚が生臭く感じられる」という現象に遭遇したことはありませんか? これは魚介料理ではなく、“ワインと合わせた瞬間”に発生する生臭さ─そのメカニズムを、メルシャン(キリングループ)が学会で発表した研究が、科学的に明らかにしました。

研究の発端と発表

2008年9月に開催された「日本味と匂学会 第42回大会」において、メルシャン株式会社の商品開発研究所・田村隆幸氏らによる発表「ワインと魚介の組み合わせによる生臭み発生のメカニズムの解明」が行われました。研究では、ホタテの干物と69種のワインとの組み合わせを対象に官能評価を実施。その結果、ワイン中の「鉄(Fe)」含有量が高いほど、生臭みの強さが増すことを世界で初めて明らかにしました。fun.ac.jp+9KIRIN – Kirin Holdings Company, Limited+9キリンの研究開発+9

なぜ“鉄”が犯人なのか?

さらなる調査で明らかになったのが、ワイン中の「二価鉄イオン(Fe²⁺)」が、魚介に含まれる脂質の酸化を促し、不快な揮発性成分「(E,Z)‑2,4‑ヘプタジエナール」などを瞬時に発生させるというメカニズムです。これによって口中で生臭みを強く感じることが示されました。fun.ac.jp+6KIRIN – Kirin Holdings Company, Limited+6キリンの研究開発+6

実験データが示す相関とメカニズム

ワイン中Fe²⁺濃度が1 mg/L以上の場合、生臭み強度が顕著に高まる傾向が確認されました。モデルワインに硫酸鉄を加えて実験しても同様の結果が得られ、EDTAによるキレート処理によって生臭みが抑えられたことから、Fe²⁺が主要因であることが裏付けられました。

実践的な対策と応用

この研究結果から導き出される、実践的な対処法は次の通りです:

  • 鉄含有量の低いワインを選ぶ
     たとえば、日本の国産白ワイン(特に甲州ワイン)は統計的に鉄含有量が少ない傾向があり、和食や刺身との相性が良いとされます。
  • 魚介を油脂と合わせて提供する
     欧米スタイルでは、魚介にバターやオリーブオイル、クリームなどを使うことで生臭み成分が油に溶け、生臭さが抑制される効果があります。

コラムまとめ

生臭さはワインの中の微量な「鉄(Fe²⁺)」が、魚介の脂質を酸化させ、生臭成分を生成することで引き起こされる。単品では問題ない魚介が、ワインと併せたとたんに“生臭さ”が立ち上がるその理由も、これで理屈が通ります。

これにより、単なる経験則だった「白ワインと魚介」というマリアージュが、酸化メカニズムと「鉄」という成分に基づいた科学的視点から理解可能になりました。また、和食と合わせるなら「鉄含有量が少ないワイン」や「調理に油脂を取り入れる」などの工夫が、テーブル上での生臭さを防ぐ具体策として提案されています。

このような観点も考えながらこのサイトでは多様な

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