寿司職人が施す手仕事
① 下処理
- 殻外し:殻を割り、柱(貝柱)を外す。
- 内臓処理:黒い外套膜を残しつつ、内臓や余分な部分を取り除く。鮨に使うのは主に「舌」と呼ばれる部分。
- 色素を守る工夫:鳥貝の黒紫色は摩擦や金属との接触で色落ちしやすいため、まな板にラップやガラス板を敷いて直接触れさせない。これにより、外套膜の鮮やかな色調を損なわずに仕上げられる。外套膜の黒紫色を保つことは、鳥貝の鮮度と美の証であり、そこに江戸前の矜持が宿る。
② 下味・仕立て
- 生:肉厚の甘味と、噛み応えをそのまま活かす。
- 湯引き:軽く熱を通すことで、身が反り返り、甘味が増す。鳥の羽ばたきのような独特の姿は、この仕立てで最も映える。
- 包丁仕事:筋を断つ鹿の子包丁を施すことで、歯切れと舌触りがさらに柔らかくなる。
③ シャリとのバランス調整
湯引き仕立てには、米酢主体で爽快感を持たせると、春らしい軽やかさが広がる。
生の鳥貝には、赤酢を軽く効かせたシャリが良い。甘味を引き締め、海の余韻を残す。